-労使協定を適切に締結・届出しよう-
労使協定には多くのものがあります。中でもスタートアップがまず締結しておくとよい労使協定をご紹介します。スタートアップではなくても、正しく協定が締結できているかの確認にもなりますので復習としてもぜひチェックしてみてください。
「どんな時に必要?」
- 社員を雇い、残業・休日出勤をすることがある
- 給与天引き(寮費・ランチ代・親睦会費など)をしたい
- 研究開発で相性がよいフレックスタイム制や裁量労働制を導入したい
- まず何から整えるか、順番と最低限の要件を知りたい
▼まずは必須の2つ
1) 36協定(時間外・休日労働の協定)
- 法定労働時間(原則:1日8時間・週40時間)を超えて働かせるには、労働者代表と36協定を締結し、労基署への届出が必要です。届出をしない残業は原則違法です。参考資料(厚労省)
- 2019年施行の上限規制により、原則月45時間・年360時間(臨時的特別の事情がある場合でも年720時間、複数月平均80時間、月100時間未満等)を超えられません。※詳細は厚労省指針で確認を。厚生労働省
- 届出様式は厚労省サイトからダウンロード可能。
- 過半数代表の適正選出チェック欄が追加されています。
- ダウンロードはこちら→厚生労働省
よくあるつまずき
- 「うちは少人数だから口頭でOK?」→NG。
- 「書面締結+労基署届出」が必須要件です。
2) 賃金控除の協定(いわゆる「控除協定」)
- 賃金は原則“全額払い”。税・社会保険料以外を天引きするには、「労使協定(書面)」が必要です(例:寮費・食事代・親睦会費・社内販売代金・貸付金返済等)。労基署への届出は不要。賃金控除の労使協定に関する案内
- 何でも控除できるわけではなく、「事理明白」なものに限定されます。項目は協定書に具体的に列挙を。
よくあるつまずき
- 「同意書があれば個別でOK?」→NG
- 原則は「労使協定」(過半数組合または過半数代表)で定める必要があります。
▼研究開発職でよく使われる制度 2つ
3) フレックスタイム制(労基法32条の3)
- 就業規則の定め+労使協定で導入。協定には「清算期間・その総労働時間・コア/フレキシブルタイム(設定する場合)」などを明記します。
- 清算期間は最長3か月まで設定可能(働き方改革による見直し)。R&Dの繁閑に合わせた運用がしやすくなります。ただ、煩雑になる点もあり、清算期間1ヵ月に設定するのがおすすめ。
- フレックスタイム制の詳しい内容は→ フレックスタイム制のわかりやすい説明&導入の手引(厚労省)
よくあるつまずき
- 「フレックスなら36協定は要らない?」
→労基法上の法定時間を超える分は36協定が必要。清算期間内の超過管理と割増の扱いを運用ルールに落とし込むのがコツです。
4) 専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)
- 「対象業務(省令で定める20業務)」に限り、労使協定で“みなし労働時間”等を定め、労基署へ届出する制度。研究開発や情報処理システムの分析・設計など、業務の進め方を労働者の裁量に委ねる必要があるものが対象です。
- 協定には健康・福祉確保措置/苦情処理措置/対象業務の具体化など、必須記載事項があります。導入前に厚労省資料で要件確認を確認しましょう。→専門業務型裁量労働制の解説(厚労省)
よくあるつまずき
- 「エンジニア=一律で裁量労働制!」→NG。
- 対象業務の限定性と具体的職務内容の適合が重要。
【誰と結ぶ?——「過半数代表者」の正しい選出】
- 事業場に過半数組合がなければ、監督・管理職でない者を、「使用者の意向を離れた民主的手続き(投票・挙手・持ち回り決議等)」で選びます。選出目的を明示するのがポイント。(例:この労働者代表選出では、36協定締結の労働者代表を努めます)
- 使用者は過半数代表者に不利益取扱いをしてはならず、協定事務ができるよう必要な配慮を行います。
【作成・締結・届出の実務フロー(最短版)】
- 過半数代表者を適正選出(選出記録を保管)。
- 協定案を作成(36協定/賃金控除、必要に応じフレックス/専門業務型裁量)。
- 書面で締結(締結の協定書は書面)。36協定や専門業務型裁量は労基署へ届出(届出は電子申請も可)、賃金控除は届出不要(社内周知は必要)。様式は厚労省の最新版を使用すると便利です。→主要様式ダウンロードコーナー(厚労省)
- 就業規則の整合(フレックス導入時は就業規則への規定が必須)。
- 社内周知(掲示・イントラ等)。協定・就業規則は労働者に周知し、いつでも見られる状態に。
【スタートアップで「よくあるつまずきポイント」まとめ】
- 協定の“相手”が不適切:管理監督者を代表にしてしまう/使用者指名で決めてしまう。→適正選出が前提。
- 36協定の未届出で残業:急な繁忙で後追いに。→締結→届出→運用の順番を死守。
- 控除項目が曖昧:協定に「その他諸費用」だけ。→具体列挙+「事理明白」な範囲に限定。
- フレックスと割増の整理不足:清算期間・総労働時間・時間外の扱いを不明確に。→協定と就業規則で明文化。
- 裁量労働の対象外業務に適用:職務実態と法定の対象業務がズレる。→対象業務の適合性を精査。
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