TOP > 支援先インタビュー > 補助金事務の体制を立て直し、自立を促してくれたブースター
支援先インタビュー
インテグリカルチャー株式会社
取締役CTO 川島一公 さん
2025.12.15
細胞培養技術を用いた「細胞農業」により、持続可能な食料生産システムの構築を目指すインテグリカルチャー株式会社。2015年の創業から成長を続け、2023年には国の補助事業に複数採択された。その事務処理に関する支援をリバネスキャピタルに依頼した経緯と実際の内容について、取締役CTOの川島一公氏にお話を伺った。
——リバネスキャピタルに支援を依頼した経緯について教えてください。
当時、我々はムーンショット型研究開発制度やスターダストプログラムなど、国の補助事業に複数採択していただいた時期でした。非常にありがたいことである一方、研究開発型のスタートアップにとって、これら公的資金の予算管理や事務処理は非常に重い業務です。当時は管理部門のメンバーが1名しかおらず、研究開発のメンバーも兼務で書類作成などを行っていました。
アカデミア時代から科研費の経験などもあるため、やるべきことの理解はできています。ただ、扱う金額が数千万から億単位になってくると、もう兼務で回せるレベルではありません。膨大な書類業務が発生し、四半期ごとに「あの書類はどこ?」「これは何の書類?」といった混乱がどうしても起きてしまう。このままでは本来注力すべき研究開発に専念できなくなるという危機感がありました。
——そこで外部への委託を検討されたのですね。
正直なところ、当時は「こうした業務を委託できるのか」という知識すらありませんでした。国の補助事業の運用経験があるような組織や人材は希少ですし。そんな中で、リバネスキャピタルさんがこうしたハンズオン支援を行っていると伺いました。他の選択肢を検討する余裕もなく、信頼できるリバネスグループだからこそ、まずは相談したという経緯です。
——実際の支援が始まって、どのような印象を持たれましたか?
一言で言えば、「カオスを収束させるプロ」だと感じました。一般的なアウトソーシング会社の場合は、委託できる業務の範囲が決まっていて、「このくらいまで整理できたら声をかけてください」といったスタンスがほとんどです。しかし、スタートアップが一番困っているのは、その整理をする時間がないことであり、時には「どうすればその整理ができるのかがわからない」ということもあります。
一方でリバネスキャピタルの最大の特徴は、「寄り添い型」の支援をしてくれる点にあります。我々が特にリクエストしなくても、頃合いを見てスッと現場に来てくれて、状況を適切に把握していく。「おそらくこの部分がわかってなさそうだ」という勘所を掴んで、カオスな状況をさばいていく。そういった能力が非常に高いと感じました。
——特に印象に残っているエピソードはありますか?
エピソードというか、担当いただいた津久井さんの動きですね。非常に物腰柔らかい方なのですが、現場が混乱してスタックしそうになると、驚くべき手際で問題を解決してくれました。例えば、研究費の事務処理においては、申請書類に記載されている品名と実際の購入品名が微妙に異なるといった、「わかる人にはすぐわかるけれど、わからない人には永遠にわからない」という類の難しさがあります。津久井さんは、そういった不整合を現場のヒアリングを通じて一つひとつ着実に潰していく。あの「さばき」の的確さは、研究開発型ベンチャーの現場を知り尽くしているからこそなのでしょうね。
——支援を通じて、貴社の体制はどのように変化しましたか?
実は、リバネスキャピタルとの契約は、あるタイミングで円満に終了しています。これはネガティブな意味ではなく、我々が「自立」できたからです。当初、私は「目の前の業務が回らないから助けてほしい」という、その場しのぎのつもりで依頼をしていました。しかし、津久井さんからは「ひとまず私が介入しますが、そのまま外部に頼り続けていては会社として自立できません。本来目指すべきは、新しい人を採用して、社内で自走できる体制を作ることですよね?」と言われました。
——単なる業務代行ではなく、組織作りまで見据えていた。
そうです。要するに「甘えるな、成長しろ」と(笑)。実際のところ、業務フローの構築と新たに採用した担当者への引き継ぎを含めて、「これなら社内で回せますね」という状態をしっかりと作ってもらいました。スタートアップにとって、公的資金の不手際は業界全体の信用に関わる致命傷になりかねません。そうしたリスクを回避しつつ、同時並行で自社で運用できる強い体制も構築していただいた。本当に感謝しています。
——これから法人化や事業拡大を目指すディープテックベンチャーに向けて、アドバイスをお願いします。
創業前の時点では「実現したい世界」だけを見ているはずです。私自身もそうでしたし、それで良いと思います。事務的な作業にどれほど工数を奪われるかということは、実際に会社を始めてみないと具体的なイメージがつきません。重要なのは、「全て自分たちでやらなければならない」という考えを捨てて、プロに頼るという選択肢を持つことです。創業メンバーだけで乗り切ろうとすると、必ずどこかで限界が来ます。
リバネスキャピタルのような専門家に相談し、その手ほどきを受けることは、単なる「外注」ではありません。会社が次のステージへ進むための「ブースター」だと考えるべきです。カオスな時期を乗り越える手助けをしつつ、最後には「自立していきましょう」と背中を押してくれるパートナーは、スタートアップの成長に本当に不可欠だと思います。
——本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
【インテグリカルチャー株式会社 概要】
2015年10月設立。“細胞農業インフラの発展と普及”というミッションを掲げ、独自の汎用大規模細胞培養技術「CulNet System」を核に、化粧品・食品・培養肉などの研究開発を通じて細胞農業インフラの構築を目指すバイオベンチャー。
https://integriculture.com/